修復手順は、当サイト推奨、伝統手表装の「そのまま修復」の一例です。
ここでは細部の工程を省略してあります。実際は20工程以上となる手間のかかる内容です。
特殊な修復部分などがある場合は、更に工程数が増えます。
傷みが激しい場合や、墨や絵の具(顔彩)を多く使われた作品などは多くの手間と時間を
要します。
作業に入る前に作品の状態・寸法を記録し、どのような
作業手順で進めるかを検討します。
お客様のご要望をお伺いします。
古くなった作品は墨や絵の具(顔彩)が落ちたりにじんだり
することがあります。
特殊な液体で絵の具を定着させます。
作品部分の裏に貼ってある古い和紙を剥がして
いきます。作品によって違いますが、3〜4枚貼ってあり、
慎重な作業が要求されます。
作品の裏に新しく薄い和紙を貼ります。「肌裏」といいます。
紙の厚さ、質、糊の濃度などを考え、作品にあったものを
選びます。
掛軸を巻いた時、再度折れてしまわないように補強
します。3ミリ幅程度の薄い和紙を折れる箇所に糊で
貼ります。これにより巻いても折れにくくなります。
この作業には手間がかかります。
作品を引き立たせる布地(裂:キレと言います)を
選びます。お客様のご希望の色をお伺いします。
作品の内容に合わせ、こちらで合わせることもできます。
和紙を貼った布地を作品に合う寸法で裁断し、作品の
周りに貼り合せていきます。
掛ける場所やお好みにより寸法指定も出来ます。
掛軸全体に貼る和紙を「中裏」といいます。
これによりハリとコシが生まれ、仕上がりが良くなります。
最後の裏打ちです。土を混ぜた丈夫な和紙を使います。
濃度が薄い糊を使うため、刷毛で何度も叩き込み、
和紙の繊維と繊維を絡ませます。
板に貼りこみ2週間以上乾燥させます。状態を見て
板から外し、表にして更に乾燥させます。この工程が短いと
完成した掛軸に反りや歪みなどが出てしまいます。
梅雨の時期や湿度の高い季節には1ヶ月以上必要です。
和紙を何度も重ねた掛軸は硬くなります。
それを解消するため掛軸の裏にイボタロウという特殊な
ロウを塗り、数珠で擦ります。これにより、掛軸全体が
柔らかく手触りも良くなります。
上部に半月型の八双(はっそう)、下部に軸先を付けた
軸棒を取り付けます。軸先は陶器、木、塗り物、金軸などが
あり、作品と布地に合ったものを選びます。
ご希望があればお選び出来ます。
掛軸の上部に紐を取り付けます。紐を掛軸に固定する
ため「鐶(かん)」という専用の金具を打ち込みます。
これにより掛軸を掛けたり、収納したり出来ます。
実際に掛けて全体の仕上がりを確認します。
この段階で反りや歪みが出てきた場合は何度も
「掛け慣らし」をする事で仕上がり度合いを確認します。
いろいろな環境で掛軸を巻いたり広げたりすることで
「掛けた状態」を良くするようにしていきます。
反りや歪みが出てきた場合は手直しを行い、
掛軸の「姿勢」を良くします。